抄録
細胞は栄養飢餓に陥った際、オートファジーによって自らの構成成分の分解を行い、分解産物を再利用する。シロイヌナズナを用いた先行研究で、栄養飢餓のみならず高塩・高浸透圧ストレスによってもオートファジーが亢進すること、栄養飢餓や高塩ストレスで亢進するオートファジー誘導のシグナル伝達には活性酸素が関与していることが報告された。本研究では細胞内をより明瞭に観察することのできるタバコ培養細胞BY-2を用いて、それらの結果の追試験を行った。
オートファジーの過程で形成されるオートファゴソームというオルガネラをGFP-Atg8融合タンパク質で可視化した。これまで生細胞を用いてオートファゴソームを観察してきたが、本研究では細胞を化学固定し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内で形成されたオートファゴソームの総数を測定してオートファジーを定量化することを試みた。
シロイヌナズナと同じ濃度のNaCl・mannitolをタバコ細胞に与えたところ、24時間以内に細胞のほとんどが死んでしまった。そこでまず、タバコ細胞が生存できるぎりぎりのNaClとmannitolの濃度を決定した。現在、各ストレスによるオートファジーの活性化の度合を調べており、得られた結果からストレス間のオートファジー誘導の相違、オートファジー誘導のシグナル伝達系における活性酸素発生の関与について議論する。