抄録
植物にとって,メリステムの成長ステージをコントロールすることは,体制を決定する上で重要である.そればかりか,生殖に成功を収めるには,栄養成長から生殖成長への転換と花序メリステムから花メリステムへの転換が適切に制御されることが肝要である.われわれは,イネの花序形成に関わるメリステムの転換メカニズムを明らかにするため,研究を行なっている.
生殖成長相への転換前後での,イネのSAMにおける遺伝子発現の変化を調べたところ,OsMADS34の著しい発現上昇と,OsMADS14とOsMADS15の発現上昇が認められた.OsMADS34は,SEPホモログの中でもイネ科植物に保存されたグループに属し,われわれが以前にイネの花芽決定遺伝子として報告したものである.また,OsMADS14,OsMADS15はシロイヌナズナAP1のイネオーソログであり,花成への寄与が推測されている.これらのMADS-box遺伝子が花序形成を制御すると考え,遺伝学的関係と分子間相互作用を解析した.
本発表では,OsMADS14/15,OsMADS34の発現抑制体の表現型や,発現パターン,分子間相互作用の解析結果,OsMADS34のイネ科植物オーソログにおける転写調節領域の相同性や発現パターンを紹介する.イネ科植物のメリステムの転換におけるOsMADS34の役割を議論したい.