抄録
厳密に制御した実験条件下で同一遺伝型の植物個体にわたってサンプリングしたメタボロミクスデータは、代謝物レベル間で有意な相関関係をもつ。過去の研究では代謝相関ネットワークのトポロジについて調べられていたが、相関ネットワーク内で密に連結した代謝物ノード群 (相関モジュールと呼ぶ) が「遺伝型依存あるいは組織依存の代謝経路」と対応するかどうかは不明であった。我々はガスクロマトグラフ質量分析計 (GC-MS) を用いて、シロイヌナズナの3種の遺伝型 [Col-0, methionine overaccumulation 1 (mto1), transparent testa4 (tt4)] の根サンプルについて代謝一斉分析を行った。この根データと発表済みの地上部データとを合わせて、地上部と根との間あるいは遺伝型間で代謝相関比較を行った。また、構築した代謝相関ネットワークに対し、グラフクラスタリングを用いて相関モジュールを抽出した後、各モジュールについてKEGG pathway enrichment analysisを行った。その結果、グラフクラスタリングアプローチが代謝経路に関連した遺伝型依存的あるいは組織依存的な代謝物相関クラスタを与えることを示す。