抄録
ブナでは毎年コンスタントに花を咲かせず、間欠的に大量の開花・結実が起こることが知られている。このような間欠的繁殖が起こる要因として、主に気温等の外生要因や個体内資源量等の内生要因が考えられてきた。これらの要因は間欠的な花芽分化を引き起こすシグナルとして直接作用することが想定されている。一方、ブナのような落葉広葉樹では翌年に開葉・開花する芽は前年夏から分化が始まるが、シグナルを受容して花原基が分化すると考えられる時期には花原基の有無を形態観察からは識別できない。そこで本研究では、LEAFYの相同遺伝子(FcLFY)の発現量を花芽分化のマーカーとして使用することを試みた。
野外に生育するブナ5個体を用いて、2009年4月から2010年12月までの約2年間、2週間間隔で芽におけるFcLFYの発現量をリアルタイムPCR法により測定した。また、形態観察が可能な時期については発現量測定に用いた芽での形態観察を行った。さらに、発現量測定に用いた芽に対応する枝内の炭水化物量および窒素量を測定し、これらの個体内資源量とFcLFYの発現量の相関を解析して花芽分化に与える影響を調べた。本アプローチによって、間欠的繁殖の要因の評価が可能になると考えられる。