抄録
ヤマノイモ属のムカゴには、GAによって休眠が誘導されるGA-誘導休眠がある。ABAもまた、ムカゴの発芽を抑制する。これまで、1)ヤマノイモ(Dioscorea japonica)の芽生えからABA合成の鍵酵素遺伝子であるDjNCED1と2、とABA異化の鍵酵素遺伝子であるDjABA8’ox1、2と3のORF全長配列を単離し、2)ABA8’ox1と2のリコンビナントタンパク質には、ABA8’ox活性があり、3)非休眠ムカゴのGA処理はDjNCED1と2の発現を高め、DjABA8’ox3の発現を低めること、を明らかにした。本研究では、ヤマノイモの低温処理した非休眠ムカゴをGA3で培養し、ムカゴのABAとその異化物質の内生レベルをLC-MS/MSによって定量し、同時にABA代謝遺伝子の発現レベルを半定量的RT-PCRによって調べた。GA処理によってDjNCED1と2の発現は増加し、DjABA8’ox2と3の発現は減少した。GA処理によってABAの内生レベルは顕著に増加した。ヤマノイモのムカゴでは、GA処理がABA代謝遺伝子の発現を調節することによってABAの内生レベルを高めて、休眠を誘導することが示唆される。ABAなどの定量には、軸丸祐介博士(理研)にご協力いただきました。記して謝意を表します。