日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション8 10/10(金)15:00~16:15
巨大ガス惑星の形成:重元素の効果
*生駒 大洋
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p. 93

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抄録
巨大ガス惑星の大質量エンベロープの起源は原始惑星系円盤ガスである。微惑星の衝突・合体によって成長した固体の原始惑星(以後、「固体核」と呼ぶ)が地球質量の1/10程度になると、円盤ガスを大気としてまとう。この大気の質量は、現在のエンベロープの質量に比べて桁違いに小さい。微惑星の集積がさらに続き、固体核がある臨界質量に到達すると、大気は重力的に収縮を始める。その収縮に伴って、円盤ガスが惑星の重力圏内に流れ込み、大質量のエンベロープが形成される。これまでの研究では、大気の組成が太陽組成(主成分は水素とヘリウム)であると仮定されてきた。太陽組成の仮定の下で求められた臨界質量は、おおよそ地球質量の10倍である。このサイズの固体核を円盤ガス消失以前に作るには、厳しい条件が必要である。しかし、原始の大気は重元素(主に炭素と酸素)が主成分であったと考えられる。その重元素の源は微惑星の揮発性成分である。微惑星は、固体核に到達する前に大気中で蒸発・剥離などを経験する。固体核が臨界質量に到達する以前は、ガスの集積率に比べて微惑星の集積率が圧倒的に高いので、微惑星の揮発性成分の寄与は非常に大きいと期待できる。そこで本研究では、円盤ガスと微惑星の揮発性成分との混合大気の構造を数値計算し、様々な混合比について臨界質量の値を調べた。さらに、円盤ガス捕獲のタイムスケールも見積もった。その結果、(1)臨界質量は重元素量が増加するとともに急激に減少し、(2)もし微惑星の成分が大気質量の 50 % 以上を占めれば、2-3地球質量以下の固体核でも円盤ガス消失以前に巨大ガス惑星になることがわかった。本研究の結果より、巨大ガス惑星形成の必要条件が緩和される。
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© 2003 日本惑星科学会
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