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モデル植物であるArabidopsis thalianaは世界中に非常に多くのエコタイプが分布する。各エコタイプ間では1000bpに1つ程度しか塩基配列が異ならないものの、近年の研究により、様々な表現型の違いが見出されている。我々のグループでは、理研BRCに収集されている354種のエコタイプの耐塩性を評価し、ゲノムシークエンスが読まれているCol-0に対して、顕著な耐性を示す、あるいは高感受性を示すエコタイプを発見した。本研究では単離された耐塩性、あるいは塩高感受性エコタイプの、発芽時における耐塩性を評価した。その結果、幼植物時で塩耐性を示すエコタイプは発芽時では塩高感受性を示し、一方、幼植物時で塩高感受性を示すエコタイプは発芽時では耐塩性を示す逆相関の傾向が見られた。このような発芽時と幼植物時の耐塩性の逆転現象は、極度の耐塩性を示す塩生植物などでも観察されることが知られている。
そこで本研究では、幼植物時と発芽時における耐塩性の逆相関が、同一因子によるものなのか、あるいは違う因子によるものなのかを明らかにするために、耐塩性の逆転現象が明確に観察される、耐塩性エコタイプ、 Zu-0を用いて、発芽時および幼植物時、それぞれの塩耐性遺伝子のマッピングを行った。