日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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多重ホルモン処理における遺伝子発現解析
*岡本 真美坪井 裕理郷田 秀樹嶋田 幸久平山 隆志
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p. 0831

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抄録
植物ホルモン、アブシジン酸(ABA)は非生物的ストレスに関与している一方で、サリチル酸(SA)、ジャスモン酸(JA)等が制御する生物的ストレスにも関与している。近年の報告から、防御応答時においてABA、SA、JAがほぼ同時に作用することが明らかになっている。我々は、培養細胞を対象にしたNMRによる一斉代謝物解析から、ABAとSA同時処理により単独ホルモン処理とは異なる生理状態が誘導されることを示した。本研究では、ABAとSA同時処理により誘導される生理状態をより詳細に把握する目的で、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を試みた。その結果、ABAまたはSA処理により発現変動が誘導される遺伝子は、これまでの報告のようにもう一方のホルモン処理により抑制される傾向を示した。その一方で、ABAとSAで同時処理した場合、多くの細胞周期関連遺伝子が単独処理に比べて発現がより強く抑制されることがわかった。これらの多くがG2/M期移行に関するものであったことから、培養細胞の核相を観測したところ、4C核が増加していることが確認された。また、ABAとSA同時処理のみで発現が変動する遺伝子が多く見いだされた。以上の結果から、複数の植物ホルモンの情報は、単に加算的に働くのではなく新たな刺激として働き、単独の刺激とは異なる生理状態を誘導すると考えられる。
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© 2011 日本植物生理学会
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