日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナにおける長鎖塩基1-リン酸ホスファターゼの機能解析
*加藤 舞今井 博之
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p. 0921

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抄録
スフィンゴ脂質の代謝産物である長鎖塩基1-リン酸は,気孔開閉に関与するアブシシン酸情報伝達における脂質シグナル伝達物質である。長鎖塩基1-リン酸は,長鎖塩基キナーゼによって合成され,長鎖塩基1-リン酸リアーゼ(DPL)または長鎖塩基1-リン酸ホスファターゼ(SPP)によって分解される。本研究において,シロイヌナズナのAt3g58490遺伝子が長鎖塩基1-リン酸ホスファターゼ (AtSPP1)をコードすることがわかった。AtSPP1に関するT-DNA突然変異株spp1を用いて,地上部の新鮮重量の変化を計時的に測定した結果,spp1における重量の減少速度が野生株に比べて有意に低かった。さらに,葉の表皮を用いてABA処理による気孔開度を測定したところ,spp1は野生株よりも気孔をより閉鎖することが分かった。これらの結果から,AtSPP1が気孔開閉に関与するアブシシン酸情報伝達経路の構成要素の一つであることが示唆された。シロイヌナズナのDPL突然変異体であるdpl1は,セラミド合成酵素の阻害剤であるフモニシンB1に対して感受性を示す。本研究において,spp1をフモニシンB1で処理したが,感受性を示さなかった。このことは,長鎖塩基1-リン酸の分解系におけるDPLとSPPの生理的機能の違いを反映しているかもしれない。
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© 2011 日本植物生理学会
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