抄録
真核生物において、ヌクレオソームの構成因子であるヒストンタンパク質のN末端領域は、遺伝子の発現変化に伴いヒストン修飾酵素によるアセチル化、メチル化などの化学修飾を受ける。それら化学修飾の質的および量的変化が、ゲノムの構造および遺伝子発現の変化と関連したクロマチン構造変換の制御に寄与すると考えられている。植物においても、発生、春化などの過程に関わる遺伝子発現制御にヒストン修飾の変化が重要な役割を担うことが知られている。また一方で、植物は環境ストレス条件に応じて、ゲノムレベルで遺伝子発現応答をすることが知られているが、環境ストレス条件下でのクロマチン変動および遺伝子発現制御に関わるヒストン修飾の変化についての理解は不十分である。我々はシロイヌナズナにおける、乾燥などの環境ストレス条件下でのクロマチンの動態変化と、これに関わる修飾酵素の解析を進めている。本シンポジウムでは、植物での環境ストレス応答における、ヒストン修飾変化を中心としたクロマチン制御機構の役割などについて議論したい。
参考文献
1) Kim et al., Plant & Cell Physiology (2008) 49, 1580-1588.
2) Kim et al., Plant,Cell & Environment (2010) 33, 604-611. Review.