抄録
本研究では,統合保育場面における自閉スペクトラム症(以下ASD)児と他児との関係性の形成過程と,それを成立させるために保育士が果たす役割を質的に検討することを目的とした.4歳の知的障害を伴うASD児を対象に観察を行い,エピソードを抽出し分析を行ったところ,ASD児と他児との関わりは,“教える-教えられる”のような一方向的な関係から,他児が遊びを通しASD児のイメージを共有しようと試みる関わりへと変化していたことが示された.また,ASD児と他児との関わり場面における保育士の介入は,【双方に具体的な関わり方を教示】する介入から,【子ども同士の関わりを見守りつつ,必要に応じて手助け】をするような介入へと変容し,その後,【遊び場面における子ども同士の関わりを仲介】するような介入へと変化しており,それに伴ってASD児と他児は【遊びのテーマを共有】できるようになっていたことが示された.また,ASD児と他児との関わりと,保育士の介入の変化は相互に影響し合っており,ASD児,他児,保育士の三者関係全体が変化しながら関わりが継続している可能性が示唆された.