2019 年 35 巻 1 号 p. 56-60
ピボキシル基を有する抗菌薬の投与による二次性カルニチン欠損症によって発症した急性脳症の1歳男児例を報告した.患児は発熱を伴うけいれん後に意識障害を主訴に入院となった.食欲低下を伴う上気道炎でCefteram Pivoxilを6日間投与されていた状態であり,入院時所見で低栄養状態を認め,対光反射の減弱とBabinski反射陽性と認めた.血液生化学検査では代謝性アシドーシスを伴う低血糖と高アンモニア血症,さらに血清中フリーカルニチンの減少とピボキシルカルニチンの上昇を認めた.第8病日の頭部MRI拡散強調像では両側前頭葉,頭頂葉,後頭葉皮質に高信号強度を認め,第30日施行の頭部MRI画像では大脳萎縮を認めた.99mTc-ethylcysteinate dimer SPECTでは両側前頭葉・左側頭頂葉領域の低血流所見を認めた.特に低栄養状態の小児にピボキシル基を有する抗菌薬を使用する場合には二次性カルニチン欠損症の発症予防に留意する必要があり,そのような状況ではL-carnitineの予防的投与を配慮すべきかもしれない.