2021 年 37 巻 1 号 p. 68-74
近年,急速に普及している仮想現実(virtual reality: VR)技術によって臓器の立体構造を3D表示し供覧することが可能となっている.今回,小児外科領域の医学教育においてのVRの有効性を検討することを目的として本研究を行った.
30名の被験者を無作為に2群に分け,一方には小児の上行結腸由来の嚢胞性疾患症例のCT画像(CT(ct→vr)群)を,もう一方には同症例のVR画像を供覧させ(VR(vr→ct)群),臓器の立体構造の理解度を測る試験を行った.次に,供覧するCT画像とVR画像を入れ替えて(CT(vr→ct)群,VR(ct→vr)群)クロスオーバー試験を行った.それぞれの試験の所要時間を比較すると先にVR画像を供覧した群(VR(vr→ct)群)が有意に短かった.また,正答率では先にVR画像を供覧した群(VR(vr→ct)群とCT(vr→ct)群)が有意に高かった.
臓器の立体構造の把握が難しい症例に関しては,先にVR画像で全体を把握後,CT画像を詳細に確認することが有効であると考えられた.