化膿性筋炎の罹患筋は下肢や体幹の骨格筋が多く,外傷や免疫能低下などの素因を伴わない上肢発症例の報告は少ない.今回,MRI所見から左上腕三頭筋化膿性筋炎を疑い加療を行った症例を経験したため報告する.症例は3歳女児.左上肢を動かさない事と発熱を主訴に受診した.血液検査で炎症反応は高値で,骨軟部感染症を疑いMRI検査を行ったところ,上腕三頭筋や周囲の脂肪組織に炎症所見を認め,同部の化膿性筋炎の可能性が高いと判断した.血液培養検査後,抗菌薬の点滴静注加療で症状とMRI所見の改善を得て合併症なく退院した.血液培養は2セットとも陰性だったが,臨床経過より化膿性筋炎と診断した.化膿性筋炎は進行すると膿瘍形成するため外科的治療を要し,後遺症を残すこともある.MRI検査で早期診断することで,侵襲的な処置を行わず治療できる可能性がある.発熱に加えて上肢の痛みがある場合には当疾患の存在も念頭に診察・検査を行うべきである.