唾石症は,青壮年期に片側の顎下腺および顎下腺管に好発する疾患であり,食事中や食後に唾液腺の腫脹と疼痛を一過性に生じる.今回,右頬部の持続的な腫脹,発赤,疼痛を契機に受診し,CT検査にて右耳下腺管を閉塞する唾石と,両側耳下腺体内の唾石を認め,両側耳下腺唾石症と診断した13歳の小児例を経験した.右耳下腺管の唾石症は,右閉塞性化膿性耳下腺炎をきたしており,経静脈的抗菌薬治療と唾液腺管開口部からのブジー挿入,唾液腺マッサージを施行し軽快した.両側耳下腺体内の唾石については,無症状であり経過観察中である.小児の唾石症は,頻度は少ないもののプライマリケアでも遭遇しうる疾患である.摂食時に一過性の唾液腺の腫脹や疼痛を認める場合だけでなく,急性耳下腺炎や頬部の発赤,腫脹を認める場合でも,唾石症が鑑別診断に挙がる.唾石症は治療に外科的介入を要するため,画像検査の必要性に留意し,評価すべきである.