2023 年 39 巻 1 号 p. 30-34
Wolman病はライソゾーム酸性リパーゼの欠損が原因で乳児期早期に死亡する予後不良な常染色体潜性遺伝形式をとる代謝性疾患である.現在は,遺伝子組み換えヒトライソゾーム酸性リパーゼによる酵素補充療法が可能となっているが,以前は通常生後6か月以内に死亡する疾患であった.今回,酵素補充療法承認以前にWolman病と診断した兄妹例を経験した.兄は生後2週間より腹部膨満と四肢るい痩が徐々に進行し,日齢51に原因不明のまま死亡した.妹も生後3週間より腹部膨満と嘔吐を呈し,日齢76で撮影した腹部単純CT検査で副腎石灰化を認めたことで,Wolman病の診断にたどり着くことができたが,生後4か月で多臓器不全のため死亡した.兄にも妹と同様に副腎石灰化を認めていたことよりWolman病であることが想定された.我が国において最近20年でWolman病と診断された症例は1例のみという希少疾患だが,治療可能な疾患であり,早期診断早期治療のために疾患啓発が重要と考える.