日本小児放射線学会雑誌
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39 巻, 1 号
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第58回日本小児放射線学会学術集会“不断前進 小児放射線学:子どもたちの未来のために”より
  • 古川 理恵子
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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  • 金子 一成
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    乳幼児における上部尿路感染症(urinary tract infection: UTI)の反復と,それによる腎の瘢痕化は慢性腎不全への進展リスクである.したがって上部UTIを起こした乳幼児の管理目標は,その反復を防ぎ,腎瘢痕の形成を阻止することである.

    近年,上部UTIを起こした乳幼児に対する画像検査の進め方について,ボトムアップアプローチ(Bottom-Up Approach: BUA)とトップダウンアプローチ(Top-Down Approach: TDA)と呼ばれる2つの対照的なアルゴリズムが提唱されている.BUAは上部UTIを起こした乳幼児全例に排尿時膀胱尿道造影(voiding cystourethrography: VCUG)を行い,膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux: VUR)を有する患者を抽出し,管理しようとするものである.一方,TDAは上部UTIを起こした乳幼児全例を対象として急性期に99mTc-DMSA腎シンチグラフィーを実施し,異常を認めた場合のみVCUGでVURの有無を検索するというアプローチである.

    BUAとTDAのいずれにも一長一短があるが,筆者はわが国の現状を考慮すると,BUAが現実的であると考えている.

  • 菱木 知郎
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    肝芽腫の多施設共同研究を基盤とする臨床試験において,初診時に正確に腫瘍の進展(PRETEXT)を診断することは患者を正しいリスク群に振り分け適切な治療を行ううえでは極めて重要である.また,外科治療の方針決定にも正確な画像診断が求められる.このため,臨床試験を成功させるためには精細な画像診断に基づく質の高い画像診断が必須となる.近年JCCG肝腫瘍委員会では遠隔画像診断システムを利用した中央画像診断が全例に対して行われ,正確なリスク分類と効果判定が担保されている.さらにこれらの画像情報に基づく外科療法コンサルテーションに取り組んでいる.これらの取り組みは世界に先駆けたものであり,画像診断と外科治療の標準化が求められる今後の国際共同臨床研究において必須のものとなると考えられる.

  • 鮎澤 衛
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    川崎病患者に合併する冠動脈瘤や拡張病変は,経時的に血管壁の石灰化,内膜肥厚,壁在血栓の発生,側副血行,無症候性の血栓性閉塞とその後に生じる閉塞後再疎通など,多彩な変化を示す.その診断と管理のためには,形態と機能の両面からの評価が必要である.

    従来,形態評価は選択的冠動脈造影によって行われたが,現在はCTによる冠動脈造影(CCTA)が主流である.CCTAによって選択的冠動脈造影に代わる良好な画像を撮影する努力が必要であり,当科ではβ-blocker内服による心拍数コントロールを行っている.

    一方,機能評価は心筋血流評価(MPI)として,当科では心筋シンチグラムを行っている.近年,半導体SPECTにより,撮像時間短縮と座位による撮影が可能となり,検査の低侵襲化,低年齢化を図っている.

    さらに,今後発展が期待される川崎病性冠動脈病変の評価方法について述べる.

  • 桑鶴 良季, 白石 明彦, 桑鶴 良平
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    IVR(interventional radiology)の手技は,血管系の手技(vascular intervention)と非血管系の手技(non-vascular intervention)に大別される.対象となる疾患は出血や腫瘍,血管奇形など非常に多岐にわたる.日々の臨床では,血管系の手技が多用されるが,対象となる部位や疾患に応じて非血管系の手技も頻用されており,両者を併用した手技も存在する.また,IVRでは手術と比較して侵襲性の低い治療が可能であるため小児においても多く行われている.

    今回,日常臨床において当科で頻繁に施行している腹部・骨盤部領域の手技に関して症例を提示しながら自験例を中心に解説する.

  • 岡藤 郁夫
    原稿種別: 特集
    2023 年 39 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    Wolman病はライソゾーム酸性リパーゼの欠損が原因で乳児期早期に死亡する予後不良な常染色体潜性遺伝形式をとる代謝性疾患である.現在は,遺伝子組み換えヒトライソゾーム酸性リパーゼによる酵素補充療法が可能となっているが,以前は通常生後6か月以内に死亡する疾患であった.今回,酵素補充療法承認以前にWolman病と診断した兄妹例を経験した.兄は生後2週間より腹部膨満と四肢るい痩が徐々に進行し,日齢51に原因不明のまま死亡した.妹も生後3週間より腹部膨満と嘔吐を呈し,日齢76で撮影した腹部単純CT検査で副腎石灰化を認めたことで,Wolman病の診断にたどり着くことができたが,生後4か月で多臓器不全のため死亡した.兄にも妹と同様に副腎石灰化を認めていたことよりWolman病であることが想定された.我が国において最近20年でWolman病と診断された症例は1例のみという希少疾患だが,治療可能な疾患であり,早期診断早期治療のために疾患啓発が重要と考える.

原著
  • 則内 友博, 西 明, 畠山 信逸
    原稿種別: 原著
    2023 年 39 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    2017年6月小児救急医学会より「小児急性虫垂炎診療ガイドライン」が策定された.その中で画像診断について,超音波検査を第一選択とし,必要に応じてコンピュータ断層撮影(computed tomography; CT)検査を考慮し,その場合1回の造影CTが望ましいとの旨が記載された.本研究では2013年から2021年までの間に急性虫垂炎疑いで当院に紹介となった患者を対象とし,ガイドラインの策定前後でどのような画像検査が選択されたのかを調査した.対象者数は2017年6月以前が115名,以後が165名の合計280名であった.ガイドラインの策定前後で超音波検査が第一選択とされた割合はやや増加していたが(12% vs 25%: p < 0.05),1回の造影CTが選択された割合は低いままであった(25% vs 18%: p = 0.48).画像診断の選択の観点からは小児急性虫垂炎診療ガイドラインが臨床現場へ浸透しているとは言えず,放射線被ばくを減らすためのさらなる努力が必要である.

症例報告
  • 石田 理奈, 米山 俊之, 石川 有希美, 嶋 泰樹, 織田 久之, 新妻 隆広, 大日方 薫, 山本 麻子, 大橋 博文, 清水 俊明
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 39 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    顎癒合症は,上下顎が骨や軟部組織によって癒着している極めて稀な先天異常である.顎癒合症を伴う多発先天異常を認め臨床的にDobrow症候群と診断した2歳女児を報告する.

    在胎38週3日,出生体重2334 g.生直後に開口障害があり,経鼻挿管を施行され,日齢107に気管切開術を施行された.合併異常として,右耳介欠損・外耳道閉鎖,頸部瘻孔,左耳介低形成,顎癒合症,小顎があった.頭頸部・胸部3 Dimensional CT画像(以下3D-CT画像)で顎癒合症,中耳骨形成異常,肋骨癒合,胸椎形態異常を認めた.頭部MR画像では左前頭葉に髄鞘低形成および髄鞘化遅延を認めた.2歳現在重度の発達の遅れがある.顎癒合症と合併する先天異常の特徴からDobrow症候群と診断した.

    顎癒合症を伴う多発奇形症候群の鑑別は多岐に渡る.特に,胸椎・肋骨形態異常はDobrow症候群に特異的であり,予後にも影響するため,詳細な画像評価が診断に有用である.

画像報告
  • 藤井 茜, 巷岡 祐子, 河野 達夫, 榎園 美香子, 槙殿 文香理, 陣崎 雅弘
    原稿種別: 画像報告
    2023 年 39 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/15
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    胸骨骨折は,長管骨骨幹部骨折や肋骨骨折と同様に児童虐待を示唆する最も特異な徴候の一つと考えられているが,文献的にはあまり報告されていない.胸骨骨折の多くは胸骨柄と体部の間で起こり,特に小児では分節脱臼/骨折の形式を示す.ルーチンの全身骨単純X線写真撮影法は,上肢との重なりや不適切な撮影範囲により,胸骨病変の描出が不十分で評価に適さない場合がある.胸骨を意識して,脊椎側面像を上肢挙上位で撮影する,胸骨側面ターゲット撮影を追加するなどの工夫が有用である.また胸部CTは急性期・陳旧性ともに骨折の検出に優れる.虐待を見逃した場合の影響の重大さに鑑みて,臨床的に虐待が疑われるにもかかわらず画像上の確証に乏しい場合には,胸部CTを積極的に用いることが正当化されると考える.日本医学放射線学会画像診断ガイドライン(2021)では,虐待を疑う状況における肋骨骨折の検出に関して,適切な線量設定のもとに胸部CTを行うことを弱く推奨している.

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