2024 年 40 巻 1 号 p. 10-16
1983年のトロントグループによる世界初の肺移植の成功から15年遅れて,1998年に本邦初の生体肺移植が成功裡に行われた.その後20余年が経過し,本邦における肺移植は,1,000例を超えた.成績も良好で,5年生存率は70%を超え,10年生存率も60%を超えるなど,世界屈指のレベルとなった.世界の肺移植数は,世界的にも経年的にも増加しており,本邦でも2022年は年間100例を初めて超え,今後,増加する医療である.しかし,小児肺移植数は世界的にも少なく,未成年者に対する肺移植は,世界で年間100例程度の実施数であり,10歳以下の症例は20例前後に過ぎない.また,本邦では,世界で唯一生体肺移植が継続して行われており,小児に対する生体肺移植も必須の治療オプションである.そこで,慢性呼吸不全に罹患する小児患者の治療の一つとして,肺移植が定着し,将来的に増加していくことを期待し,今回,肺移植の現状と未来について概説する.