抄録
本研究では2005年に打ち上げ予定のSELENEに搭載されるマルチスペクトルセンサMI(マルチバンドイメージャ)、ハイパースペクトルセンサSP(スペクトルプロファイラ)を対象としている。これらのマルチスペクトルセンサの広刈幅データとハイパースペクトルセンサの測線データから推定できる様々な月表面の特徴を組み合わせ、詳細な地質を自動的にマッピングする手法の開発が目標である。今回は、マルチスペクトルセンサであるMIから得られる画像を想定し、同様にマルチスペクトルセンサであるClementine画像を用いて地形的特徴の抽出と分光情報を用いた岩相分類を試みた結果を報告する。月表面の最も特徴的な地形はクレータである。クレータの存在密度を把握することにより、その地形の形成年代に制約を与えることができる。またクレータ内やエジェクタの構成物質を分類することにより、その場所の地殻鉛直構造に関する情報が得られる。そこで、本研究ではクレータについての自動抽出を、シミュレーション画像及びClementineUVVIS画像(Full Resolution Clementine UVVIS Digital Image Model)を用いて試みた。これまでのクレーター抽出研究は対象画像に合わせて人の目でパラメータチューニングを行うものが大部分であるが、本研究では完全自動化を実現した。解析手法は、まずClementine画像に対しMNF(Minimum Noise Fraction)変換を行った。前処理としてMNF変換を用いることで、ノイズの影響を減らした画像を作成することができる。その画像に対してエッジ抽出処理を施し、自動閾値法を用いて2値化処理、さらに細線化処理を経てエッジ画像を抽出した。クレーターの抽出にはエッジの抽出精度が大きく効いてくることは沢辺ほか(2003)で分かっている。そのため、エッジ抽出には、エッジの高さとノイズの影響度合いを用いる方法を使用した。この方法は、月の画像のようにエッジが不明瞭である画像に適すると考えられる。以上の手順で作成したエッジ画像に対し、クレータを円であると仮定して円の抽出を行うが、本研究では円抽出にファジィハフ変換を用いた。具体的には、以下のような手法を用いている。連続するエッジ上の3点をランダムに抜き出し、その3点を通る円を推定し、円の中心点候補を得る。円の中心点候補を得ることで、画像にもよるが通常のハフ変換に比べ、計算負荷を100分の1以上減らすことができる。続いて、得られた中心点候補に対し円を描き、その円とエッジまでの距離に基づくメンバーシップ関数を規定して、ファジィハフ変換投票を行う。投票の多い円から順に円抽出を行うことで、複数の円抽出ができる。さらに、得られた円の内部と外部に存在する岩相の分類を分光情報に基づいて行う。最終的にはクレータの中心位置、半径、内部・外部の岩相分類、クレータのタイプ等を自動で得ることができる。以上の手法によりシミュレーション画像では、100%円の抽出が可能であった。クレメンタイン画像では、前回よりもクレータを約80%の確率で抽出することができた。また、さらに分光情報を付加することで、自動クレータ抽出/分類手法を実現した。参考文献沢辺頼子・松永恒雄・六川修一,月表面におけるクレータの自動抽出,2003年地球惑星関連学会合同大会,2003年5月.