抄録
微惑星の形成には2つの異なる過程が考えられている。一つは、塵が非重力的な力により衝突合体することによる集積。もう一つは、円盤中心面に沈殿した塵の層が自己重力不安定性により分裂することによる形成である。以前有力であった重力不安定説を最近は疑問視する人が多い。これは、塵の層で生じるshear不安定により乱流状態になり、自己重力不安定を起こすほど塵が沈殿できないことが指摘されたからである。ところが、最近、Sekiya and Takeda (2003) は塵の非重力的な合体がガス流により妨げられることを示した。そこで、ダスト層はshear不安定のために重力分裂の臨界密度に到達できないのかもう一度検討することにする。このshear不安定は公転速度がダスト/ガス比に依ることに起因する。ガスは圧力勾配がかかるためケプラー速度よりもゆっくりと公転しようとするが、塵はケプラー速度で公転しようとする。塵とガスの間には抵抗が働くため、質量の大きなほうに引きずられる。このため塵の中心面への沈殿に伴い円盤鉛直方向にshearが生じることになる。このshearにより塵の層が流体力学的に不安定となり塵は巻き上げられ沈殿が妨げられると予想されている。原始惑星系円盤の進化の過程でどうなるかを見るために、2種類の密度分布を非摂動状態として用いて比較した。ダストが沈殿成長すると、ダスト層内の密度分布は一定になると予想されている。この場合はダスト層とガス層の遷移層に強いshearが生じるために不安定になることがわかった。この不安定性により生じる乱流によって、ダストはRichardson数一定の分布に近づくと予想される。そこで、この分布について不安定性を調べたところ、安定であることが分かった。したがって弱い乱流による微調整を繰り返すことによりRichardson数一定の分布を取りながらダスト層は徐々に薄くなり、重力分裂の臨界密度に達してダスト層が重力分裂することが予想される。