抄録
本研究では輻射によるエネルギー輸送の効果を入れて、惑星と光学的に薄い原始惑星系ガス円盤との重力相互作用について調べた。惑星はその両側に、リンドブラッドレゾナンスで励起される密度波をたてる。外側の密度波は惑星に負のトルクを、内側の密度波は正のトルクを与える。その2つのトルクの和が惑星にかかる正味のトルクとなる。本研究では最初の段階として片側からのトルクを計算する。過去における研究では等温の状態方程式が仮定されていた。今回はエネルギー方程式を入れて線形計算することで密度波に対するエネルギー輸送の効果を考える。原始惑星系円盤内では輻射によってエネルギーが輸送され、輻射輸送はダストのオパシティーが支配している。ダストの成長や微惑星の形成が進むとダストのオパシティーは十分に小さくなると考えられる。よって、光学的に薄い円盤を仮定することにする。光学的に薄い円盤ではダストの量が増すと輻射輸送の効率があがる。我々はダストの量をパラメーターとして片側からのトルクを計算した。輻射輸送の効果により片側からのトルクの大きさは等温の場合に比べ10%しか変わらないことが分かった。しかし惑星の近傍が片側のトルクに大きく寄与していることも分かった。このことは正味のトルクが等温の場合に比べ、大きく変わる可能性があることを示している。