埼玉理学療法
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研究と報告
気管切開児のスピーキングバルブ使用を困難にする因子の検討
神原 孝子
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2005 年 12 巻 1 号 p. 15-19

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抄録
気管切開術を施行された児(以下気管切開児)に対して,スピーキングバルブ(Passy-Muir valve以下SV)の使用を勧めているが,SVの装着において,呼吸困難感を訴えたりSVを呼気で飛ばしてしまう児がいる。今回,気管切開児のSV装着を困難にしている原因を検討する目的で,平成15年4月までに気管切開術を施行された17例(男児9例女児8例 年齢1歳~8歳)を対象に,1)胸郭の硬さ・変形・異常呼吸パターン,2)呼吸時の胸郭の周径差と腹部周径差,3)動脈血酸素飽和度,4)呼気ガスによりSV装着前と装着時のCO2測定(カプノグラフ付パルスオキシメータNPB75),5)安静呼吸において人工鼻装着時およびSV装着時の経気管内圧の測定(アナログ式圧力メータ)を行った。その結果,SVの装着可能時間は0秒~3時間とばらつきが見られた。呼吸パターンは腹式優位9例,胸式優位3例であった。異常呼吸パターンは,シーソー呼吸が5例,陥没呼吸が2例に,陥没呼吸とシーソー呼吸の合併が1例に見られた。胸郭変形は漏斗胸5例,樽状9例,扁平胸郭2例であった。胸郭の硬さは,ほぼ正常1例を除いて16例は硬かった。吸気呼気の胸郭の周径差0~1 cm,平均0.418 cm,吸気呼気の腹部の周径差0.2~1.2 cmであり,平均0.765 cmで腹式優位を示した。SaO2は91%以上14例(100~91%),77%1例,88%1例であった。呼気CO2は,SV装着による明らかなCO2の上昇はみられなかった。以上の結果からはSV装着の可否に明らかな傾向はみられなかった。SV装着時の経気管内圧は,10 cmH2O前後で安定している児7例,20 cmH2Oを超えている児4例,内圧が呼吸毎に高まってしまう児3例であった。この結果より,SVの装着を困難にする因子として最も重要なものは気道内圧と考えられたが,圧が高くてもSV装着可能な症例がいることから更に検討が必要と思われる。
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© 2005 社団法人 埼玉県理学療法士会
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