主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 51
【はじめに、目的】
歩行時は、前足部の母趾側に最も高い足底圧が生じる。(Chiu et al., 2013)母趾側の過剰な足底圧は、足底面の組織の病変や中足骨の疲労骨折など障害の原因となるため(Tom et al., 2017)、足底圧を前足部全体に分散させて障害予防を試みることがある。臨床現場では、足底圧の増減に影響する歩行速度の設定や、進行方向に対する足の向き(以下、足角)の指導は対応策の一部として知られているが、これらの要因が前足部足底圧の分散にどのような影響を持つかは不明である。本研究では、歩行時の足角、歩行速度の違いが前足部の足底圧分布に与える影響を調査し、障害予防の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は、健常成人14名(男性7名、女性7名)とした。足角の条件は、指示なし歩行、足部外転位(以下、toe-out)歩行、内転位(以下、toe-in)歩行の3条件とした.課題動作は、快適歩行速度の4 km/hと速歩の速度である6 km/hでのトレッドミル歩行とした(Segal et al,. 2014)。足底圧はPedar-X mobile in-shoe system(novel社)により記録し、前足部の母趾側と小趾側の区画に分けて算出した後、母趾側の足底圧を小趾側の足底圧で除した値(以下、足底圧比)を用いた。統計学的解析は、歩行速度と足角条件間の比較に二元配置分散分析を用い、事後検定としてBonferroniの多重比較検定を行った。
【結果】
足底圧比は、4km/h歩行時(指示なし歩行:1.48±0.45、toe-out歩行:2.76±1.06、toe-in歩行:1.06±0.43)、6 km/h歩行時(指示なし歩行:1.66±0.34、toe-out歩行:2.69±0.95、toe-in歩行:1.21±0.27)であり、足角3条件と歩行速度間に交互作用を認めなかった(p=0.72)。事後検定の結果、4 km/hと6 km/hの足底圧比はともに、足角3条件間で有意に変化したが(p<0.01)、速度間で足底圧比には差がなかった(p=0.54)。
【結論】
歩行時の足圧中心の軌跡は、距骨下関節回内角度の増加に伴い母趾球に、距骨下関節回内角度の減少に伴い前足部外側に移動しやすくなる(江戸ら、2016)。toe-out歩行では、前足部外転に伴い距骨下関節の回内角度が増加し、toe-in歩行では前足部内転に伴い回内角度は減少することから(Mousavi et al., 2021)、今回の結果では足底圧比がtoe-out歩行で高値を示し、toe-in歩行で低値を示したと考える。また、本研究では歩行速度間で足底圧比に差を認めなかった。以上のことから、歩行速度が異なる幅広い人に対し、足角を指示することで前足部の足底圧を調整できる可能性がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:E-2701)。