主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに,目的】
腰椎固定術後患者の患者報告アウトカムであるOswestry disability index (ODI)には身体機能や術前傍脊柱筋筋内脂肪浸潤 (Fatty Infiltration:FI)に関与することが報告されている.我々は第9回本学会にて,術前FIが腰椎固定術後のODIの臨床目標の一つであるPatient Acceptable Symptom State (PASS)の達成可否に影響することを報告した. しかし,ODIに関与するといわれている体幹筋力を含めた検討は行っていない.今回,ODIのPASS達成可否に術前FIが影響するかを術前の体幹筋力を含めて検討することとした。
【方法】
対象は当院で腰椎変性疾患に対して初回腰椎固定術を施行し, 6ヵ月以上経過した者とした.除外基準は脊柱矯正固定術,脊 椎手術歴,認知障害,神経系疾患,MRI画像がない者とした.従属変数はODIのPASS達成 (22%)の可否とした.独立変数は,術前FI,年齢,性別,BMI,術前ODI,等尺性体幹屈曲筋力・伸展筋力 (以下:屈曲筋力・伸展筋力)とした.FIはL4,L5高位の傍脊柱筋の脂肪浸潤の程度をGoutalier分類の5段階を用いて, Grade0.1をFI無し,Grade2.3.4をFI有りとして2値に分けた.さらにL4とL5のFIが,ともにFI有りをFI群とした2値変数を用いた.屈曲筋力・伸展筋力は座位にてハンドヘルドダイナモメーター (μTas F-1 アニマ社)を用いて測定した。統計解析はFIがODIのPASS達成の可否の予測要因かを明らかにするため,多変量調整モデル (モデル1:調整変数=年齢,性別,BMI,モデル2:調整変数=モデル1+術前ODI,屈曲筋力・伸展筋力)にて検討した (有意水準5%).
【結果】
87名 (女性46名,平均年齢±標準偏差69.3±9.6,PASS達成者 60名,平均術後期間187日,病変椎間数中央値2椎間)を対象とした.単回帰分析の結果,術前FI (OR=0.19,p<0.01)で有意差を認めた.多変量調整モデルの結果,モデル1では術前FI (OR=0.27,p<0.01)で有意差を認めた.モデル2では術前FI (OR =0.37,p<0.01)で有意差を認めた. 屈曲筋力 (OR=0.72,p =0.43),伸展筋力 (OR=2.01,p=0.18)では有意差を認めなかった.
【考察】
腰椎固定術患者のODIのPASS達成の可否の予測要因は,体幹筋力ではなく術前FIであった.この結果から,ODIのPASS達成可否には体幹筋の質が重要であると考える.
【結論】
術後腰痛の予防を目的に治療を展開していく上で,術前FIを評価することは重要である.
【倫理的配慮】
本研究は医療法人社団苑田会倫理審査委員会の承認 (第167号) を得た後,患者の同意を得て実施した.