日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 32
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口述 6
地域在住高齢者における自動車運転と外出場所の多様性との関連:NCGG-UniCoプロジェクト
*野口 泰司小松 亜弥音岡橋 さやか金 雪瑩進藤 由美斎藤 民
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抄録

【はじめに、目的】

高齢期において外出は社会参加や健康維持の点から重要であるものの、高齢者の外出場所やその多様性についての報告は乏しい。外出は自動車などの移動手段による影響を受け、車を運転ができない場合、外出場所やその多様性が制限される可能性がある。本研究は、地域在住高齢者における自身の運転での移動の制限と外出場所の多様性との関連および他の移動手段における効果修飾を検討することを目的とした。

【方法】

研究デザインは横断研究であり、郊外の1自治体にて要介護認 定を受けていない地域在住の高齢者で、郵送による自記式質問紙調査に回答した432名を対象とした。外出場所は Participation in ACTivities and Places OUTside Home Questionnaire (ACT-OUT)に基づき、①日常生活とセルフケアの場所 (スーパーや銀行、役所など9か所)、②医療とヘルスケアの場所 (病院や歯科など5か所)、③社会的・文化的な場所 (友人宅、寺院、博物館など12か所)、④余暇と運動の場 (公園や温泉、山河など8か所)の合計34か所について、過去1年間の訪問の有無を尋ね、合計個所数を算出、標準化した。目的変数を外出箇所数および分類別外出箇所数、説明変数を自身の自動車運転による移動の可否とし、基本属性、社会経済状況、健康状態、他の移動手段を調整した線形回帰分析を行った。

【結果】

対象者の平均年齢は74.8歳 (SD=6.0)、女性は52.8%だった。対象者のうち24.5%は自身で車を運転して移動できなかった。 ACT-OUTで評価された過去1年間の外出個所数は平均21.5か所 (SD=5.1)であった。多変量解析の結果、自身の運転での移動がないことは少ない外出個所数と関連した (β=-0.40, p<0.001)。外出場所の分類別では、日常生活とセルフケアの場所 (β=-0.32, p=0.007)および社会的・文化的な場所 (β=-0.44, p<0.001)と負の関連を示した。他の移動手段として、公共交通機関が利用できることはこの関連性を緩和したが、友人・家族の車への同乗による効果修飾は認められなかった。

【考察】

地域高齢者において自動車運転の制限は外出場所の多様性と負の関連を示し、その特徴として日常生活に関わる場所や社会的・文化的な場所への訪問が低かった。移動資源の制限を受けても外出場所が制限されないような環境整備や人的支援が必要である。

【倫理的配慮】

国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認のもと実施した (承認番号:1744)。

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