主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第42回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 42
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/09 - 2021/12/11
医療系企業や大企業が少ない地方で医工連携を進めるのは、とても困難である。実際、大学のもつ技術シーズ(研究成果)と企業ニーズのマッチング(産学連携)は至難の技であり、目標の達成(製品化)に10年あるいはそれ以上の開発期間を要する例(薬事承認を必要とする高度な医療機器・医薬品)は珍しくない。そこで島根大学は発想転換して、大学病院や医学部の困りごと・要望(医療ニーズ)と地域の技術力(企業シーズ)を融合することで医工連携の課題を解決してきた。ここで重要なのは、ニーズ提案者(医師、看護師、理学療法士、薬剤師などのコメディカル)が医療技術(医療シーズ)を合わせ持つ点である。医療現場(ニーズ&シーズ)と企業シーズが有機的に結びつき、産学官連携が求心力を失うことなくゴールへ邁進できる仕組みが整っていれば、地域発で世界をリードする医工連携オープンイノベションが実現する。島根大学は、臨床現場での満足度が最大限に達するまで研究開発を地域オープンイノベションで続け、責任をもって製品化をサポートしている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが宣言される以前から、島根大学ではICTを活用した医工連携オープンイノベーションを進めてきた。例えば、バーチャルホスピタル構築によるリモート医療や、自己抜去による点滴事故の防止システムの技術について特許を申請している。同システムの研究開発はオンラインを活用しており、緊急事態宣言下の東京・京都・兵庫と面会禁止の島根大学病院の病室間で現在も粛々と進展している。また、薬理学実習に用いる動物を大幅に削減し、動物愛護・費用対効果の面からも有用なシミュレーター『Pharmaco-PICOS』を地元企業と開発した。医学部学生は島根大学が産学協同で開発したフェイスシールドを装着して実習に臨んでいる。本シンポジウムでは、島根大学が進める医工連携オープンイノベーションの事例をポストコロナの未来医療に繋がる共同研究を含めて紹介する。