主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
昨今、国内外の医薬品開発の現場では、患者・市民参画(Patient and Public Involvement、 PPI)が注目され、患者の意見を取り入れる活動が活発に行われている。PPIの機運の高まりを背景に、患者・市民の医薬品開発に対する理解を促す教育の場や、患者・市民参画の事例や経験を有効活用し患者の代表性をさらに高める仕組みの重要性が増している。患者の意見を医薬品開発に取り入れる活動には患者の医薬品開発への正しい理解が必要であり、医薬品開発への患者参画を加速するためには製薬企業と患者との相互理解を深めることが重要である。
患者の治験への不安や恐れの克服のため、オーストリアのベーリンガーインゲルハイム(BI)社は、2020年、治験に対する正しい知識を得るための社会共創活動として、患者団体と共同でClinical Trial Ambassador(治験アンバサダー)プログラムを開始した。EUPATIとも連携し、Knowledge Is Powerというスローガンのもと、 治験におけるPatient Centricity育み、治験環境を改善し、新しい治療法をより早く患者さんに届けることを目的としている。
2021年、このオーストリアにおける経験を基に、日本における医薬品開発の環境に合ったプログラムへの改良を始めた。複数の患者団体と意見交換、ワークショップを重ねた結果、オーストリア(海外)と日本の文化の違いを考慮すべきであること、公益性を持たせるべきであること、現状の日本の課題に基づく解決策を設定することの必要性が確認された。
本講演では、日本において治験アンバサダープログラムが実装に至った背景を解説するとともに、「なぜ、治験アンバサダーが必要なのか?」への答えとして、日本における治験アンバサダーの役割への期待について述べる。 プログラムの改良における議論の成果として、日本において治験アンバサダーが今できると考えられること、将来的に達成したい・挑戦したいこと、また、治験アンバサダーの活動を行うために必要な知識、ネットワーク、スキルについても整理する。