主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【背景】白血病が進行した場合、中枢神経に白血病細胞が浸潤をきたすことがある。中枢神経に白血病細胞が浸潤した場合、頭痛、嘔吐だけでなく痙攣をおこすことがある。近年、中枢神経浸潤を引き起こすような治療抵抗性または難治性白血病に対し、ポナチニブやボスチニブなどの第3世代のABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が数多く上市されている。これらのTKIの多くは、CYP3A4の基質であるため、代表的なCYP3A4誘導薬/阻害薬であるリファンピシンやケトコナゾールとの薬物間相互作用が明らかとされている。しかし、その他の強力から弱いCYP3A4誘導薬/阻害薬との相互作用についての情報は少ない。特に、白血病が中枢浸潤した際に使用される、抗けいれん薬との薬物間相互作用は重要と考える。【目的】本研究では、ポナチニブと強力、中等度または弱い CYP3A4 阻害薬/誘導薬との薬物間相互作用を定量化し、臨床的意義を明らかにすることを目的に、ポナチニブの生理学的薬物動態(PBPK)モデル構築を試みた。【方法】Simcyp Ver 20.1 (Certara Inc., Sheffield, UK) を用いて、in vitroおよびin vivoの研究より求められたポナチニブの物理化学的パラメータおよび生理学的パラメータよりPBPKモデルを構築し、薬物間相互作用が未知の強力、中等度または弱いCYP3A4阻害薬/誘導薬とポナチニブを併用した時の相互作用を予測した。構築したモデルの妥当性は、予測値とケトコナゾールおよびリファンピシンとの薬物間相互作用試験より得られた観測値を比較することで評価した。併用によりポナチニブの血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)が2倍以上増加または減少する場合を有意な相互作用と判断した。【結果】PBPK モデルより算出された予測値の95%信頼区間に観測値が含まれることから、構築したモデルの妥当性が示された。強力、中等度または弱いCYP3A4阻害薬の併用では、ポナチニブのAUCを有意に増加させるものはなかった。しかし、強力なCYP3A4誘導薬であるリファンピシン(経口、600 mg QD)およびフェニトイン(経口、100 mg TID)は、ポナチニブのAUCをそれぞれ60~70%および50%低下させた。【結論】ポナチニブのPBPKモデルから、ポナチニブと強力なCYP3A4誘導薬の併用において、有意な薬物相互作用が予測された。一方、CYP3A4阻害薬との併用では、薬物相互作用は示唆されなかった。