主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
【目的】Coproporphyrin I (CP-I)は,organic anion transporting polypeptide (OATP)1B介在性の薬物間相互作用(DDI)リスクをプローブ基質薬非併用下で評価可能とする内在性バイオマーカーとして,臨床試験での測定・解析事例が増加している。CP-Iを臨床試験にて活用するため,回収率・感度に優れた定量系,ベースライン血漿中濃度の個体間差,精緻なDDI予測のための解析手法や採血ポイントの設定について情報収集した。
【方法】2022年6月現在Pubmedで検索可能な,臨床試験におけるCP-Iの測定事例およびOATP1B機能マーカーとしての解析事例43報を対象とし,文献情報を精査した。
【結果・考察】CP-I濃度測定では,感度およびスループットの向上のため,固相抽出法あるいはサポート型液体抽出法によるサンプル処理後のLC-MS/MS検出が主流となっている。前処理での回収率は,固相処理前サンプルのpHをギ酸添加により下げることで改善された1)。CP-Iのベースライン血漿中濃度について,日内変動は概して小さく,民族差も認められない2)一方,OATP1B遺伝子多型3),性別4)や腎機能障害5)によって変動することが知られている。性差の原因は生合成速度の違いとされるが,DDIの指標に生合成速度はほぼ影響しないため,DDIリスク評価に際して性差を考慮する必要はないとした報告もあった6)。生理学的薬物速度論(PBPK)モデルによるDDIリスク評価においては,CP-Iを基質としたOATP1Bのin vivo阻害定数(Ki)をin vitro Kiの比で補正することで,DDIの予測精度が向上した7)。Cyclosporin A投与試験のPBPKモデルを用いた解析では,OATP1Bのin vivo Ki推定における複数用量データの必要性や採血ポイントの削減について検討された8)。報告されたモデルでは, CP-Iの生合成部位,肝固有クリアランスの律速段階など複数の仮定がおかれていたが,これらは血漿中・尿中CP-I濃度データのみから結論づけることは難しく6)7),非臨床試験も含めた今後の検討が必要である。
【結論】本発表では,感度および特異性に優れたOATP1B機能の内在性バイオマーカーであるCP-Iについて,DDI評価を鑑みた臨床試験での測定・解析に必要となる情報を総括した。これらの情報をもとに,臨床における活用実績がさらに拡大していくことが期待される。
【参考文献】(PMIDのみ記載)1) 29749254; 2) 29777022; 3) 33650309; 4) 30528195; 5) 32705692; 6) 33289952; 7) 30175555; 8) 35421902