日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S36-2
会議情報

シンポジウム
増え続ける難治性肺MAC症に対するアミカシンリポソーム吸入用懸濁液(アリケイス(R))への期待と課題
*森本 耕三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本邦の肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の約90%が肺MAC症である。標準治療法はリファンピシン(RFP)・エタンブトール(EB)にクラリスロマイシン(CAM)の3剤併用療法を基本とし、必要に応じてアミノグリコシド系抗菌薬の筋注を加えるとされている(肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012年改訂)。この標準治療法は、RFPによる消化器症状やEBによるアレルギー、視神経炎などの副作用頻度が高いため、実臨床において推奨される治療期間(菌陰性化1年以上)を投与される割合は低いことが明らかとなっている。我々のレセプトデータ解析では、標準3剤治療を6カ月間継続されていたのは59%であったが、12か月以上継続例は41%へと低下していた.また、CAM単剤治療やEBの中断が、マクロライド耐性例の主な原因であることが明らかとなっているが、上記レセプトデータ解析の結果、標準治療中に26.6%が処方変更され、その63%がマクロライド耐性化をきたす処方への変更であった。我が国のNTM症死亡者数は2,000人を超えており、これはマクロライド耐性例を含む難治重症例の累積がその一因であると推測している。このため難治性肺MAC症に対する、新たな治療薬の開発が長く望まれてきた。アミカシンリポソーム吸入用懸濁液(ALIS:アリケイス(R))は、はじめて肺NTM症治療のために開発された薬剤である。吸入による局所投与であるため、点滴投与に比較して病変局所へ高濃度で到達可能であるうえ、バイオフイルムを通過し細胞内へ到達可能であるとされる。第3相試験(CONVERT試験)の結果、承認を経て世界各国で臨床利用されている。組み込み基準は、標準治療を6カ月以上継続しているにもかかわらず、培養陽性が続く症例とされた。登録症例はランダムに2:1の割合で吸入群(590mg+ガイドラインベースの治療GBT)およびGBTに割り付けられた。一次評価項目は、6カ月目までの喀痰培養陰性化(3回連続陰性)とした。全体の平均年齢は64.7歳、69.3%が女性であった。一次評価項目である喀痰陰性化は、ALI吸入群224例のうち65例(29.0%)、標準治療群112例のうち10例(8.9%)と有意差が見られた(オッズ比4.22、95%CI 2.08~8.57、P<0.001)。副作用は、呼吸器系(嗄声、咳嗽、呼吸困難)は吸入群の方に多く見られた(87.4% vs.50.0%)。シンポジウムでは同臨床試験の追加情報や使用経験を含めて発表させて頂く。

著者関連情報
© 2022 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top