日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S37-1
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シンポジウム
BNCTの臨床、歴史と薬理技術~BNCTの臨床について
*川端 信司古瀬 元雅鰐渕 昌彦
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抄録

ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy, BNCT)は生物学的にがん細胞を標的とする放射線治療である。

ホウ素‐10(10B)原子を含む薬剤を腫瘍に選択的に導入し熱外中性子を照射することで、中性子捕獲反応により細胞内で粒子線を発生させる(10B + n→4He + 7Li あるいは10B(n, α)7Li)。生じたアルファ粒子とリチウム(Li)反跳核は、細胞一個分の距離に相当する短い飛程ですべてのエネルギーを放出する為、高LET(線エネルギー付与)の強力な粒子線治療となる。ホウ素化合物を選択的に導入すれば、捕獲反応はがん細胞でのみで生じ、周囲の正常細胞が温存される理想的な細胞選択的治療となる。その特徴は、投与するホウ素薬剤および照射する中性子が、各々単一では無~低毒性であることで、両者が相まって初めて効果を示す2段階のアプローチにより治療が成立する点にある。

ホウ素と中性子の捕獲反応により腫瘍を内部から破壊するため、細胞レベルで浸潤性に発育する悪性脳腫瘍への期待が高い。当施設では熱外中性子を用いて外照射が可能となった2002年以後、再発・初発の悪性神経膠腫、高悪性度髄膜腫等に医療用原子炉を中性子源とする臨床試験を実施してきた。これらの経験と加速器型BNCT治療システムNeuCure(住友重機械工業株式会社)を利用したステボロニン(ステラファーマ株式会社)の臨床試験(治験)成績を含め、BNCT研究と臨床の展望について紹介する。

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