日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O01-5
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一般演題(口演)
再生不良性貧血患者の血清ビリルビン測定に及ぼす血中エルトロンボパグ濃度の干渉
*小田 峻土岐 浩介鈴木 嘉治小原 直千葉 滋本間 真人
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抄録

【目的】トロンボポエチン受容体作動薬のエルトロンボパグ(EPAG)は、血中濃度の個人差が大きい薬物である。EPAGは肝胆道系の副作用があり、また、ビリルビンの測定に干渉することも報告されているが、ビリルビン測定に影響する血中EPAG濃度は明らかでない。本研究では、血清試料および再生不良性貧血(AA)患者を対象として、ビリルビン測定に関する血中EPAG濃度の干渉について検討した。

【方法】既知濃度(0.5-150 μg/mL)のEPAGを添加した血清試料中の総/直接/間接ビリルビンを酵素法で測定し、血中EPAG濃度の関連を検討した。EPAG投与中のAA患者30名(男/女:14/16、年齢:48±19歳)から採血した227検体の血清中EPAG濃度をHPLCで測定し、総/直接/間接ビリルビンとの関連を検討した。ビリルビン上昇の重症度は、CTCAE v5.0で判定した。本研究は筑波大学附属病院臨床研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。

【結果・考察】EPAGを添加した血清試料中の総/直接/間接ビリルビンを測定したところ、EPAG濃度2.0 μg/mL以上で総/間接ビリルビン値に偽陽性濃度を認め、血清中EPAG濃度と総/間接ビリルビンは正の相関関係を示した(r=0.999)。AA患者(EPAG投与量1.2(0.2-2.5) mg/kg/日)における血中EPAG濃度は9.6(0.5-57.8) μg/mLであった。EPAG投与患者において総ビリルビンが正常(n=7)、Grade 1(n=13)および2(n=10)以上での血中EPAG濃度は、それぞれ6.9±4.5、12.4±7.3および29.3±16.0 μg/mLであり、総/間接ビリルビンと正の相関関係を示した(それぞれr=0.820/r=0.856)。偽陽性を示さない直接ビリルビンが正常およびGrade 1以上における血中EPAG濃度は、それぞれ12.1±10.7および23.6±19.7 μg/mLであり、直接ビリルビン上昇時に有意に高い値を示した(P=0.015)。肝機能障害(直接ビリルビンがGrade 2以上)によりEPAGを中止した患者2名の血中EPAG濃度(中止時)は、42.1、49.4 μg/mLと高値であった。

【結論】血中EPAG濃度が2.0 μg/mL以上となると、総/間接ビリルビンの測定に干渉し、測定値が偽陽性となることを確認した。AA患者における血中EPAG濃度は干渉する濃度に達するため、EPAG投与中の肝機能障害の評価に総/間接ビリルビン値を用いることは適切でない。血中EPAG濃度が干渉するビリルビン測定法を用いる場合は、EPAG投与患者における肝機能検査としては偽陽性のない直接ビリルビンを用いる必要がある。

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