日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O03-2
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一般演題(口演)
ベネトクラクスのトラフ血中濃度とAUCの相関性についての解析
*川上 智也山際 岳朗米澤 淳諫田 淳也中川 俊作谷口 理沙林 裕美阪本 貴士水本 智咲近藤 忠一高折 晃史寺田 智祐
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抄録

【目的】ベネトクラクスは急性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病の治療に用いられる内服薬である。ベネトクラクスの血中濃度時間曲線下面積 (AUC) は治療効果と相関することが報告されており、血中濃度をコントロールする重要性が示唆されている。しかし、全ての患者のAUCを測定して効果や副作用を予測することは困難である。また、ベネトクラクスは主に肝代謝酵素CYP3Aで代謝されるため、個体間及び個体内変動が大きいと考えられている。そこで今回、CYP3A4阻害薬の併用有無におけるベネトクラクスのトラフ血中濃度とAUCの相関性について検討した。

【方法】ベネトクラクスを服用している患者55名において、服用前および服用から2、4、6、8、10時間後に採血を行った。LC-MS/MSを用いてベネトクラクスの血中濃度を測定し、台形法を用いてAUC0-24を算出した。各時間におけるベネトクラクスの血中濃度とAUC0-24の相関性については、回帰分析を用いて検討した。また、CYP3A4阻害薬の強度別に、CYP3A4阻害薬がベネトクラクスのAUCに及ぼす影響についても解析した。本研究は医の倫理委員会の承認を受け、患者の同意を得て実施した(承認番号:R2915)。

【結果・考察】ベネトクラクスのトラフ血中濃度とAUC0-24 の平均値はそれぞれ1.5±1.0μg/mL、47.7±26.9μg/mL・hrと算出され、既報と概ね一致した。各時間におけるベネトクラクスの血中濃度とAUC0-24 の間に相関性がみられ、トラフ血中濃度とAUC0-24との間には高い相関性が認められた(R = 0.927)。また、ベネトクラクスのAUC0-24はCYP3A4阻害薬を併用しなかった群で46.9±26.0μg/mL・hr、中程度の阻害薬を併用した群で62.3±37.5μg/mL・hr、強い阻害薬を併用した群で41.0±18.1μg/mL・hrであった。併用するCYP3A4阻害薬の強度に関わらず、いずれの群においてもベネトクラクスのトラフ血中濃度とAUC0-24の間には高い相関性が示された。

【結論】ベネトクラクスのトラフ血中濃度とAUC0-24の間に高い相関性が認められたことから、トラフ血中濃度を測定することでAUC0-24を推定することが可能と考えられた。 

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