日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O06-1
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一般演題(口演)
電子カルテ情報と機械学習を活用したシスプラチン誘発性急性腎障害の予測モデルの構築
*青木 優佳安部 賀央里頭金 正博村島 美穂濱野 高行和知野 千春木村 和哲日比 陽子近藤 勝弘
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抄録

【目的】シスプラチンは比較的高い頻度で急性腎障害(AKI)を発症すると報告されており、AKIの発症リスクが高い患者を早期に予測し、早期治療介入する必要がある。そこで、本研究では患者背景や検査値等の情報を含む電子カルテ情報と機械学習を活用し、シスプラチン誘発性AKIの患者を早期に予測するモデルを構築することを目的とした。

【方法】2011年1月1日から2020年12月31日までに名古屋市立大学病院で新たにシスプラチン投与のレジメンを開始した癌患者を対象とした。1クール目のシスプラチン最終投与日後14日以内に、AKIの診断に用いられるKDIGO診断基準を満たす患者を陽性患者とした。一方、シスプラチン投与を受けたがAKIを発症しなかった患者を陰性患者とし、陽性患者と陰性患者を判別する二値分類モデルを構築した。説明変数には、年齢、性別、検査値、併用薬、既往歴、シスプラチン投与情報など84個の特徴量を用いた。さらに、シスプラチンの腎毒性は蓄積毒性であることを考慮し、シスプラチン投与量は1クールでの総投与量を使用した。全データの80%を訓練データとし、モデルの構築を行い、20%を検証データとし、モデルの性能の評価を行った。勾配ブースティングを用いた決定木系のアルゴリズムであるLightGBMを用いて、AKIの発症の有無を予測するモデルを構築した。

【結果・考察】観察期間内の対象患者のうちモデル構築に使用した患者は1,253人(陽性:119人、陰性:1,134人)であった。1クール目のシスプラチン最終投与日からAKI発症日までの期間の中央値は7日であった。また、1クールのシスプラチン総投与量は70.1±23.1 mg/m2(平均±SD)であった。予測モデル構築時の陽性数と陰性数の不均衡データを調整するため、訓練データを陽性と陰性が同じ比になるように、アンダーサンプリングを行った。構築した予測モデルの感度、特異度はそれぞれ、訓練データでは0.857、0.550、検証データでは0.800、0.606であり、比較的感度の高いモデルであった。また、検証データのROC-AUCは0.781であり、AKIの発症を予測できる優れたモデルであることが示された。予測モデルの変数重要度からシスプラチン総投与量やMg製剤、ループ利尿薬などの併用がシスプラチン誘発性AKIの予測に寄与する割合が高いことが示された。

【結論】電子カルテ情報と機械学習モデルを用いることで、AKIの発症の有無を早期に予測するモデルが構築できた。

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