日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O05-6
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一般演題(口演)
児童思春期における抗うつ薬の臨床試験のプラセボ反応に影響を及ぼす要因の検討
*大久保 理沙松井 和浩成川 衛
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抄録

【目的】児童思春期における抗うつ薬の臨床試験の成功率は低い。試験の失敗の一因として,プラセボ反応の高さが報告されている。本研究では,児童思春期の抗うつ薬の臨床試験の主要評価項目として一般的に用いられるChildren's Depressive Rating Scale-Revised(CDRS-R)スコアのプラセボ反応の大きさに影響を及ぼす要因を検討した。【方法】PubMed及びClinicalTrials.govより,2023年3月までに公表されている児童思春期の大うつ病を対象とした抗うつ薬の急性期での有効性を検討する,ランダム化,二重盲検,プラセボ対照試験を抽出した。アウトカムは,各試験のプラセボ群におけるCDRS-R合計スコアのベースラインから評価時点までの変化量とした。プラセボ反応に影響を及ぼしうる要因(説明変数)として,試験デザイン上の要因,試験実施上の要因,患者関連の要因の計11要因を選定し,ランダム効果モデルを用いて単変量及び多変量メタ回帰分析を実施した。解析にはSAS version 9.4を用いた。【結果・考察】抽出した23試験における単変量メタ回帰分析にて,CDRS-R変化量との相関がp<0.2であった変数はプラセボリードイン期間,抗うつ薬の種類(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]又は非SSRI),資金元(企業又は企業以外)の3つであった。データ数に大きな偏りがあった資金源の変数を除き,プラセボリードイン期間,抗うつ薬の種類の2変数を用いて多変量メタ回帰解析を実施した。結果, プラセボリードイン期間とCDRS-R変化量の間に有意な相関が認められ,プラセボリードイン期間を設定することでプラセボ反応が小さくなることが示唆された。【結論】今後の児童思春期を対象とした抗うつ薬の臨床試験のデザインにプラセボリードイン期間を設けることで,プラセボ反応を抑えることができる可能性がある。

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