日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-P-B3
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一般演題(ポスター)
吸入薬の肺内送達薬物量予測のための新規モニタリング手法の構築
*畠添 咲希子平 大樹近藤 哲理上島 智岡野 友信角本 幹夫寺田 智祐
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抄録

【目的】吸入療法は呼吸器疾患治療において重要な役割を担うが、患者の呼吸機能や吸入パターンに起因する治療効果の個人差が問題となる。しかし、患者が実際に吸入する際の肺内送達量をリアルタイムかつ非侵襲的にモニタリングする手法は、未だ確立されていない。本研究では、吸入薬の肺内薬物送達量予測のための新規モニタリング手法として、呼気中排出薬物量測定と光反射 (photo reflection method; PRM) 法による粒子放出シグナル測定の応用可能性を検討した。

【方法】最大吸入流速 (PFR) および初期吸入流速加速度 (FIR) の異なる4種の吸入パターンで吸入を行った際の吸入流速及びPRM法による粒子放出シグナルのリアルタイム測定を行った。モデル薬物としてシムビコートタービュヘイラーを用い、粒子放出シグナルの評価指標として、出力シグナル強度と各時間における流速を乗算した値の時間曲線下面積 (AUCFR×PE, V・s・L/min) を用いた。さらに空気力学的粒子径評価装置であるAndersen cascade impactor (ACI) を用いて、吸入パターン変化による主薬ブデソニドの吸入特性への影響を評価した。肺内薬物送達量の指標として、ACIのStage3 (空気力学的粒子径4.7 μm以下) 以降に到達した薬物の割合を算出した。また、呼気中排出薬物量の指標として、Stage6 (同1.1 μm以下) 以降に到達した粒子割合を算出した。

【結果・考察】PFRやFIRの増加に伴って肺内薬物送達量は増加した。吸入流速と粒子放出シグナルの同時測定により、FIRが低い条件では設定したPFRに到達する前の低い吸入流速条件下で粒子放出が完了することが確認された。したがって、低FIR条件では吸入デバイスによる薬剤の解砕効率が低下するために肺内薬物送達量が低下することが示唆された。粒子放出シグナルの指標であるAUCFR×PEは、PFRやFIRに比して強い相関が認められた。呼気中排出薬物量に相当するStage6以下の薬物量もPERの増加に伴って増加しており、健常人での報告1,2)と近似した結果となった。

【結論】吸入薬の肺内送達薬物量予測手法として、呼気中排出薬物量と粒子放出モニタリングシステムを応用することの合理性が示された。

【参考文献】

1) Hamada S, Hira D, et al., Int J Clin Pharmacol Ther, 56 (11) 539-543 (2018).

2) Hira D, et al., J Allergy Clin Immunol Pract. 9 (12) 4507 (2021).

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