日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-P-C2
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一般演題(ポスター)
健康成人における腎有機カチオントランスポーターOCT2、MATE1/2-K介在性薬物間相互作用の評価
*小石川 知生藤原 穫前田 和哉降旗 謙一杉山 雄一楠原 洋之
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抄録

【目的】薬物間相互作用の解明は薬の安全性、適正使用のために重要である。糖尿病治療薬メトホルミンは、腎臓の分泌過程について有機カチオントランスポーターOCT2, 多剤排出輸送体MATE1/2-Kを介した尿中排泄が主排泄経路である。シメチジンとドルテグラビルは、in vitroにおいてOCT2, MATE1/2-Kを阻害することが報告されており、臨床においてはメトホルミンの血中濃度を上昇させることが知られている。しかし、これらの阻害の用量依存性や腎クリアランスに対する影響は不明であった。そこで、ヒトにおいてOCT2, MATE1/2-Kの阻害剤としてのシメチジンとドルテグラビルによる、メトホルミンの腎クリアランス、血中濃度への影響を評価した。【方法】本試験は東京大学臨床研究審査委員会の承認を得て実施した(CRB3180024)。健康成人(10名)に対してメトホルミン(500 mg, po)を投与し、阻害剤投与シメチジンは400 mgと800 mgの2つの用量(QD)で、ドルテグラビルは50 mg (BID)で6回繰り返し投与し、1日目と3日目におけるメトホルミンとの相互作用を評価した。LC-MS/MSを用いて各薬物の血漿中濃度、尿中濃度を測定した。薬物動態パラメータを計算し、阻害剤によるパラメータに対する影響を評価した。【結果・考察】シメチジン用量依存的にメトホルミンのAUCが上昇し、腎クリアランスが低下した。400 mgと800 mgそれぞれで、AUCが1.71倍、2.22倍、腎クリアランスが0.85倍、0.57倍であった。同様にドルテグラビルは複数回投与により蓄積が認められる。ドルテグラビル血漿中濃度依存的に、メトホルミンの血漿中濃度の上昇と、腎クリアランスの低下が確認された。1日目と3日目それぞれで、AUCが1.75倍、3.02倍、腎クリアランスが0.73倍、0.43倍であった。シメチジンはMATE1/2-K阻害により、ドルテグラビルはOCT2阻害により、メトホルミンの腎クリアランスを低下させ、血漿中濃度を上昇させると考えられる。【結論】シメチジンとドルテグラビルは、腎臓においてMATE/OCT2を阻害し、腎クリアランスを低下させることで、メトホルミンとの薬物間相互作用を生じる。

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