主催: 日本臨床薬理学会
【背景】ラミブジン含有配合錠のラミブジンの投与量は、クレアチニンクリアランス(CLcr)≧50mL/minのHIV感染症患者に対して300mg1日1回投与(QD)又は150mg1日2回投与(BID)である。ラミブジン300mg含有配合錠の使用上の注意に従うと、CLcr30-<50mL/minの患者では用量調節が必要で、ラミブジン300mg含有配合剤ではなくラミブジンの単剤(エピビル錠150mg)の投与が必要になる。【目的】CLcr30-<50mL/minの患者に、ラミブジン300mgQDを安全に投与可能かを確認し、ラミブジン含有配合錠の腎機能障害患者での注意喚起内容を変更する。【方法】1)既存の母集団薬物動態モデルを用い、体重70kgの腎機能正常(120mL/min)から低下(30mL/min)患者の300mgQDでの定常状態の曝露量(AUC及びCmax)を予測した。2)≧30mL/minの患者に300mgBID(600mg/日)[高用量]した複数の臨床試験の安全性情報により、高曝露時の安全性を確認した。3)市販後に実施された臨床試験(DART試験)の事後解析で、300mg/日投与の安全性情報を腎機能層別(30-<50mL/minと≧50mL/min)に比較した。またOPERAデータベースの観察研究で、eGFR30-<50mL/min/1.73m2の患者の安全性を検討した。【結果・考察】1)300mgQDの腎機能低下(30-<50mL/min)患者の曝露量は、用量調節が不要な (50-120mL/min)患者に比べ、AUCで約2.1倍、Cmaxで約1.3倍と予測された。用量調節が不要な患者の300mgBID(600mg/日)のAUC及びCmaxは、腎機能低下患者の300mgQDと同程度(約1.1倍)と予測された。これらより、腎機能低下患者の300mgQDでの安全性は実際に投与された際の安全性に加え、初期試験の用量調節が不要な患者の300mgBID(600mg/日)での安全性に基づく推定が可能と考えられた。2)300mg/日投与と600mg/日投与の安全性に有意な差を認めなかった。これより曝露量が約2倍での安全性が確認された。3)事後解析で300mg/日投与の安全性は、ベースラインの腎機能が30-<50mL/minと≧50mL/minの患者で同程度であった。また、米国の実臨床では、eGFR30-<50mL/min/1.73m2の患者の80.9%が300mg/日で投与開始されており、150mg/日と300mg/日投与の安全性は同程度であった。【結論】曝露量シミュレーション、臨床試験データ、DART試験の事後解析及びOPERA観察研究の追加の安全性データにより、CLcr30-<50mL/minの患者に、ラミブジン300mg/日を安全性の追加の懸念無く投与できることが示された。これらの情報に基づきラミブジン含有配合錠の添付文書を改訂した(2023/7/20付)。