主催: 日本臨床薬理学会
【目的】
国際共同治験が増加し、依頼者独自のアセント案への対応が必須になっており、海外仕様のアセント案の項目や内容が、日本の子どもに適しているのか見極めることが重要である。広島大学病院(以下、当院)では、新規試験のIRB審議資料について、IRB提出前に当院の事務局担当者が資料を確認し、質問票という形で依頼者に修正を依頼する事前審査を行っている。アセントについても事前審査の対象となっており、より適切なアセントを作成するためには、当院のアセント作成方針(以下、アセント方針)の制定が必要と考えられ、取り組みを行ったので報告する。
【方法】
2023年4月に院内の事務局、薬剤師、CRCからなるアセントワーキンググループ(WG)を立ち上げ、アセント方針について議論を重ね作成した。作成後、IRB申請予定のアセント案をアセント方針に沿ってWGで確認し修正を行った。また、2020年1月~2023年4月に当院で受託した新規企業治験について、受託件数、アセントの有無、事前審査でのアセントに関する疑義事項を調査した。さらに、2023年6月~8月IRB申請予定のアセントについて、WGにて確認した試験数、WGからのアセントに関する疑義事項を調査した。
【結果・考察】
基本的には、小児治験ネットワークの提供するアセント文書(文書例)に準ずることとした。当院独自のアセント方針として、文言をアセント毎に統一、目次の作成、表紙に対象年齢を記載、意思確認書の医師・CRC署名欄を設定、被験者保護に関する内容(プラセボの説明、避妊、タナー分類、意思決定の撤回書など)を記載することとした。2020年1月~2023年4月に当院にて新規に受託した144試験のうち、アセントがあった22試験において、事前審査でのアセントに関する疑義事項は1試験あたり平均11件であったのに対し、アセント方針作成後にWGにてアセントを確認した4試験の疑義事項は平均35件と増加した。また、この4試験の疑義事項のうち、アセント方針に基づくものが約半数(平均16件)、そのうち被験者保護に関するものは平均6件で、アセント方針によって、被験者保護に関わる内容のアセントへの記載漏れが無くなったと示唆された。
【結論】
アセント方針の作成は、アセント作成の均質化に有用であると考える。今後は、アセント方針に従い継続的なアセント案の確認、およびアセント方針の定期的見直しにより、アセントの質のさらなる向上に取り組んでいきたい。