日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-P-G3
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一般演題(ポスター)
CRCが防止した特定臨床研究に関する不適合の実態と院内講習会実施によるgood practiceの動向調査
*尾熊 貴之佐藤 美奈都末木 香澄内田 章子伊藤 翠乙部 恵美子秋元 美佐枝小田切 圭一乾 直輝
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抄録

【目的】当センターでは2022年4月からCRCの業務改善として、不適合を未然に防いだ事例等を「good practice」として集積している。同意取得関連や研究対象者の適格性等、重大な不適合に関わる事例も散見されるため、2022年12月に演者が担当した「臨床研究に関する院内講習会」において、不適合防止について講義し研究者教育を行った。オンデマンドと併せて延べ139人の受講提出があり、受講シートから受講者の高い理解度が確認できたため、その効果を調査するべくgood practiceの解析を行った。本発表では、集積されたgood practiceの概要と講習会前後の変化について紹介する。

【方法】院内講習会は、1)同意書版数間違い等の同意関連、2)責任・分担医師以外の医師による同意取得等の分担医師関連、3)同意取得前の研究開始、4)検査や治療における実臨床と異なる項目、5)適格基準や併用禁止療法等の不遵守を対象に、各項目の不適合について事例を交えながら実施した。good practiceについては同様の5項目と、これらに該当しないその他の項目に分けて集計した。2022年4月~11月を講習前、2022年12月~2023年7月を講習後とし、各項目の比較を行った。

【結果・考察】good practiceの総数は123件(講習前/後:80件/43件)であった。このうち、CRCが関与しなかった場合に重大な不適合と判断されていた可能性の高い事例は29件あり、当院の特定臨床研究において、CRC支援により多くの不適合が予防されていると考えられた。各項目の比較では、1)講習前/後:5件/2件、2)前/後:3件/1件、3)前/後:0件/0件、4)前/後:19件/11件、5)前/後:16件/10件、その他)前/後:37件/19件で、総数の減少は見られたものの5項目の割合に大きな変化はなかった。この要因の一つとして、good practiceの多くが本講習会未受講の研究者(前/後:64件/26件)に起因するものであったことが挙げられる。受講シートからも、「オンデマンドでないと聴講が難しい」、「日程の詳細を早く知りたい」等の意見があり、講習が受けやすい環境整備と更なる周知が重要と考えられた。

【結論】CRCの支援により、様々な不適合を未然に防ぐことに貢献した。講習会後にgood practiceの総数は減少していたものの、目に見えた効果を得ることはできなかった。今後の活動として、オンデマンド配信の期間を長くする、院内講習WEBページの更なる周知を行う等、受講者の規模を増やすことが求められる。

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