主催: 日本臨床薬理学会
【目的】近年CRCによる不正行為の報告が散見されている。これまで東京大学医学部附属病院(以下、当院)内では発生していないが、どこにでも不正行為発生のリスクは潜んでいると考えられる。そこで、不正行為を未然に防ぐことを主目的として、外部監査機関によるCRC業務の実施状況およびコンプライアンス遵守状況に関する実態調査と、コンプライアンス体制の強化に向けた研修会を行い、改善へ繋げたので報告する。
【方法】1.当該調査を実施するにあたり、治験依頼者の承諾および被験者の同意の必要性について検討した。
2.エラーが発生しやすく、エラーにより重大なリスクにつながる手順を3つ選択の上、各手順10例の計30件について外部監査機関の担当者による原資料等の確認を行った。同時に、院内CRCとCRC業務委託契約中のSMO4社のCRCによるプロセスの相違の有無等を確認するために各CRCへのインタビューも行い、調査結果を共有した。
3.院内CRC向けに研修会を開催した。
【結果・考察】1.GCP等で規定された者以外の第三者が被験者のカルテを含む原資料を閲覧することについては、委託先への個人情報の提供について当院が公示していることから、あらためて被験者の同意を得る必要性はないと判断した。一方、治験依頼者へは事前承諾を得ることとした。
2.「参加中被験者への継続の意思確認」、「治験薬投与後の経時的バイタルサイン」、「逸脱発生時の対応」の3手順を選択し、実態調査及びヒアリングを行った。各手順において大きな逸脱はなかったものの、5つの検出事項について指摘を受け、それぞれに対して改善の方向性が示された。また、項目により、SMO各社および院内CRC間において異なる認識や対応があることが判明した。これら調査結果をSMO各社および院内CRCに対し共有し、注意喚起および改善を行った。
3.研修会としてはIntegrityに関する講義と不適切行為等に関する事例についてのディスカッションを行うことで、各CRCのレベルアップに繋げた。
【結論】外部監査機関による調査を行うことで、当院スタッフでは気づきにくい点についても指摘があり、新たな気づきとなった。また、当院スタッフと外部監査機関で協働して手順を検討することで、実態調査の進め方、考え方についてのノウハウを得ることができた。今後、CRC業務以外においても調査を実施し、当院全体として品質管理を推進することを検討したい。