日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S07-4
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シンポジウム
高尿酸血症治療の生活習慣病における意義
*藏城 雅文
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抄録

生活習慣病患者では高尿酸血症の合併を高頻度に認めるが、血清尿酸値は将来の生活習慣病の発症を予測し、尿酸降下薬(尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬)が生活習慣病を改善させることが示唆されている。<尿酸生成抑制薬> 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版において、腎障害を有する高尿酸血症患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?(CQ2)についてシステマティックレビュー・メタ解析が施行されている。基本的に尿酸生成抑制薬による解析結果となったが、腎機能低下・末期腎不全の抑制を認め、腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることが条件つきで推奨されている。また、アロプリノール投与による血圧への影響を調査したメタ解析では、収縮期血圧・拡張期血圧が有意に低下することが示されている。<尿酸排泄促進薬>ベンズブロマロン(非選択的尿酸再吸収阻害薬)は、近位尿細管に発現しているURAT1を阻害することで尿酸再吸収を抑制し血清尿酸値を低下させる。痛風患者あるいは心不全患者における小数例の検討ではあるが、ベンズブロマロンは、アディポネクチンの増加、炎症の改善、インスリン抵抗性を改善させるが報告されている。さらに、ドチヌラド(選択的尿酸再吸収阻害薬)においても、動物モデルではあるが、耐糖能/インスリン抵抗性が改善することが示された。URAT1は近位尿細管だけでなく脂肪細胞においても発現していることが知られており、脂肪細胞に取り込まれた尿酸はNADPHオキシダーゼを活性化させ活性酸素を増加させることが明らかとなっている。尿酸排泄促進薬(URAT1抑制薬)は、尿酸値を低下させることに加えて、脂肪組織内における尿酸濃度を低下させることで活性酸素産生を低下させ、上述の作用が引き起こされたのではと考えられている。 心血管合併症の危険因子である生活習慣病の視点で、尿酸降下薬をどのように用いるのかについてさらなる検討が必要である。

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