日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-EL08-1
会議情報

教育講演
DCTの実装と今後の取り組み
*浅野 健人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】

当院感染制御部では宿泊療養所に入所する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象にして、洗口液の有効性と安全性を検討する特定臨床研究を行った。宿泊療養所での実施においては、複数の医師等が頻回の訪問をして、研究参加のインフォームドコンセントを受けることやデータ収集を行うことは物理的な距離の問題や感染対策の観点からも難しいことから、オンラインによるeConsentやeSourceを実装し、医師が訪問することなくデータ収集を行う環境を実現した。また、付随してアンケートを行い、研究対象者にとってのDCT(Decentralaized Clinical Trial)はどのような体験であったのかを調査した。今回の発表では、どのようにDCTの仕組みを構築したか、研究対象者にはDCTがどのようなものであったか等を報告すると共に今後計画しているDCTについても言及したい。

【方法・結果】

国内で開発されたDCT支援システムを用いて、eConsentとして動画、説明文書を用いて、電子署名が行えるように構築した。また、研究計画書で特定されたデータをeSourceとして収集できるように構築した。また、本臨床研究のプロセスを検討して、宿泊療養所での動きも想定しながら、研究対象者の病院への来院を前提にした場合と比較して、予めどのようなところで相違が生じるのかを検討したうえで、マニュアルや各種資料等の整備を行った。2か月余りの期間で95例の登録を行うことが出来、円滑に試験を終了することが出来た。また、アンケート調査においては、研究対象者48名から回答を得ることが出来た。うち、41名(85.4%)からはDCTにまた参加してみたいという回答であった。

【考察等】

eConsentやeSourceの導入により、遠隔でデータ収集を行うことが可能であることがわかった。病院での来院を前提にした場合と比較して、プロセスそのものが変わり、データ収集のプロセスにオペレーショナルデータの収集を意識する必要があることもわかった。データ収集の手段がシンプルなデザインの臨床試験においては、DCTを実装することで、症例リクルートの幅・選択肢が広がり、早く効率よく臨床試験を実施できる可能性がある。研究対象者においても、DCTに参加するという体験に関して、大きな不満はなく、再び参加したいと思っていた。

また、現在、当院では新たな大規模DCTを計画しており、その取り組みの最新の状況についても可能な範囲で報告する。

著者関連情報
© 2023 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top