主催: 日本臨床薬理学会
【背景】2016年のICHE6(R2)改訂に伴い、Sponsorに求められる事項として品質マネジメントシステム(QMS)及びRBAの履行が明記された。その後2019年のJ GCP改正に伴い国内規制に反映され、2020年1月1日以降に治験届を提出する医師主導治験にはRBAの実施が義務付けられた。上記を踏まえ、当院臨床試験部では2020年以降支援中の医師主導治験に対し、リスク管理表を用いたリスクアセスメント(リスクの特定・評価・コントロール)を含むRBAプロセスを導入した。また、2020年度より"医療技術実用化総合促進事業-RBAの実装のための取り組み"における中核拠点の取り纏め機関として、RBAプロセスとして挙げられた7ステップ「1.重要なプロセス・データの特定~7.リスク報告」の手順を明確化した上で、試験種別に応じたRBA手順書/説明書/関連様式を作成し、テキストを公開した。しかし、RBA実装の効果は明らかではない。【目的】リスク管理表を用いたリスクアセスメント(リスクの特定・評価・コントロール)を含むRBAプロセス導入の評価を行う。【方法】RBA実装における課題を抽出することを目的とし、2020年度以降に当院臨床試験部で支援した医師主導治験・特定臨床研究計11試験について、担当スタディマネジャーを対象としたアンケート調査を実施する。"RBAの7つのステップのうち実装済のステップ" "各試験で特定されたリスク数""試験開始前のRBAステップの完了に要した期間""各RBAステップの実装における課題"を主な調査項目とする。【結果】11試験すべてのRBA実装状況について回答を得た。2023年6月時点では、すべての試験において試験開始前のリスクアセスメントプロセス(リスクの特定・評価・コントロール)の実装を達成している一方、試験開始後に実施する「ステップ6リスクレビュー」については適切な時期に実施できていないなどの課題が挙げられた。また、「ステップ2リスクの特定」では、リスクそのものの定義、考え方がプロジェクトメンバー間で統一されていなかったために、リスク評価以降のプロセスに課題を残したという意見が複数挙がった。【考察・結論】本調査の結果、リスクアセスメントの基本方針やリスクレビューの時期決定などプロジェクトチームが協同して行うプロセスについてチーム内の認識が必ずしも統一されていないことが判明した。調査結果を踏まえ、プロジェクトチームへのRBAプロセスの教育方針を更新する。