日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-S30-1
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シンポジウム
厚生労働省における治験DXの取り組みについて
*飯村 康夫
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抄録

医薬品開発には、他の領域での製品開発と比較して、多大な費用、長い時間、成功率のかなりの低さが課題である。こうした中、臨床試験(治験)の迅速化、効率化のために期待されているのが、リアルワールドデータの活用である。

このため、厚生労働省では、治験DXとして、1)レジストリの活用、2)電子カルテ情報等の活用、3)DCT'(Decentralized Clinical Trials;分散型治験)の普及について、創薬プロセスの加速・効率化に向けて取り組んでいる。

1)レジストリの活用については、CIN(クリニカル・イノベーション・ネットワーク)構想として、被験者リクルート、市販後安全対策での活用の他、将来的には治験対照群としての活用を目指して、国立高度専門医療研究センター(NC)や医療系学会が構築しているレジストリの活用やそのための改修等を進める研究の支援を行っている。

2)電子カルテ情報等の活用については、PMDAが構築・運営しているMID-NETを参照して、臨床研究中核病院によるリアルワールドデータを活用するための仕組みとして「臨中ネット」の構築に取り組んでいる。臨床研究中核病院とARO部門の協力により、いわゆるデータ駆動型臨床研究を実施するための各種課題解決に取り組んでいる。

3)DCTの普及については、AMEDの研究事業の中で、臨床研究中核病院によるDCTの実施を進めるため、EDC(Electronic Data Capture)による情報の収集と送達のためのネットワークの構築とDTCによる模擬治験を実施している。DCTの普及に向けた環境整備、課題・ノウハウ等の共有を進めて行く。 

 また、日本主導での国際共同治験の実施体制を強化し、新薬等の開発の加速化を目指すため、感染症領域で国立国際医療研究センター、非感染症領域で国立がん研究センターをアジア地域における臨床研究・治験ネットワークの拠点としている。感染症や希少疾患のように、国内での必要症例数の確保が難しい場合でのアジアを中心としたグローバル試験の実施拡大が期待される。

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