主催: 日本臨床薬理学会
近年、希少疾病や難病、小児用の医薬品を中心に、必要な医薬品の国内開発が進まない「ドラッグ・ロス」の拡大が指摘されており、国内の治験環境の整備も課題の一つとなっている。市場の大幅な成長が見込めない中で、日本の創薬力を強化し、医療上必要性の高い医薬品の導入を進めるためには、分散型臨床試験(DCT)の推進や、リアルワールドデータの薬事申請への活用など、新たな技術を迅速に取り込みながら規制のアップデートを図ることが求められている。DCTにおいては、デジタル技術を活用して、被験者募集、説明・同意、データ収集(ウェアラブル・デバイス等)、モニタリング・SDVなど、治験の様々な場面をデジタル化・オンライン化することにより、治験の効率化に加え、患者の置かれた環境にかかわらず治験に参加しやすい機会を確保するなど、多くの付加価値が期待されている。
その普及に向けた取組の一環として、2023年3月にはオンラインでの説明・同意(e-Consent)に関する初めてのガイドライン「治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明及び同意に関する留意点について」(令和5年3月30日付け薬生薬審発0330第6号・薬生機審発0330第1号)を厚生労働省から発出した。この通知では、オンラインの特徴を踏まえ、本人確認の方法、被験者のプライバシー保護、コミュニケーションのあり方、動画の活用、電子署名等について、留意が必要な点を述べている。
当日はガイドラインの紹介を中心にDCTを巡る薬事規制の最近の動向に触れつつ、国内でのDCT普及に向けた動きがより一層加速化することへの期待を述べたい。