主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
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【目的】 プロトンポンプ阻害剤(PPI)は、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現増加作用を有しており、がん腫によって予後を悪化させることが報告されている。一方、胃癌化学療法中におけるPPIの併用が治療効果に与える影響について、これまでに十分な報告はない。特にVEGF受容体2に対する抗体であるラムシルマブ(RAM)併用化学療法において、PPIの併用が治療効果や血管新生にどのような影響をおよぼすかは不明である。本研究では、進行再発胃癌患者を対象として、RAM併用化学療法におよぼすPPI併用の影響について検討した。 【方法】< 2015年7月から2022年12月にRAM+パクリタキセル(PTX)あるいはnab-PTX併用療法が実施された152名の進行再発胃癌患者を対象とした。PPI併用群(73名)および非併用群(79名)の無増悪生存期間(PFS)を比較し、Cox比例ハザード回帰分析によってPFSに対する影響因子を評価した。また、患者25名(PPI併用群:15名、非併用群:10名)を対象に、RAM投与前および投与14日目における血清VEGF-AとVEGF-D濃度をELISA法で測定した。本研究は筑波大学附属病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。 【結果・考察】 RAM+PTX/nabPTX療法において、PPI併用群は、非併用群と比べてPFSが有意に短かった(中央値:112日 vs. 140日, P = 0.040)。Cox比例ハザード回帰分析の結果、PFSに影響する有意な因子は、年齢、PPI併用、Glasgow Prognostic Scoreであった。PPI併用の調整ハザード比は1.52(95%CI 1.07-2.18, P = 0.021)であり、PPIは進行再発胃癌に対するRAM併用化学療法の治療効果を減弱させる可能性が示唆された。RAM投与前および投与14日目の血清VEGF-A濃度は、いずれもPPI併用群が非併用群と比べて有意に高い値を示した(RAM投与前:488±370 vs. 235±197 pg/mL, P = 0.027; 投与14日目:924±455 vs. 571±249 pg/mL, P = 0.048)。一方、血清VEGF-D濃度は2群間で差はなかった。RAMの治療効果は血中VEGF-A濃度の高い患者において減弱することが報告されており、PPI併用による血中VEGF-A濃度の増加がRAM+PTX/nabPTX療法におけるPFSの短縮と関連していると考えられた。 【結論】 進行再発胃癌患者に対するRAM併用化学療法におけるPPI併用は、血中VEGF-A濃度の上昇を介して治療効果を減弱させる可能性が示唆された。