日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第46回日本臨床薬理学会学術総会
会議情報

シンポジウム
パーキンソン病における新薬開発
永井 将弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー HTML

p. 40-

詳細
抄録

パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)は、中脳黒質緻密部に存在するドパミン神経細胞の変性・脱落を主因として発症する神経変性疾患であり、高齢化社会を迎えた今日、その患者数は年々増加している。臨床的には、振戦、筋強剛、動作緩慢、姿勢保持障害といった運動症状を主体とするが、進行に伴い抑うつや認知機能障害、自律神経障害など多彩な非運動症状を呈することが知られている。病理学的特徴としては、αシヌクレインを主要構成成分とする細胞内封入体であるLewy小体の出現が挙げられ、これが病態形成に深く関与していると考えられている。 現在、日常診療において用いられているすべての治療薬は症状改善を目的とした対症療法であり、ドパミン神経細胞の変性・脱落そのものを抑制する疾患修飾療法(disease-modifying therapy: DMT)は未だに実用化されていない。既存の薬剤の多くはドパミン系に作用し、その中でもレボドパ製剤は登場以来半世紀以上にわたりゴールドスタンダードの地位を占めている。しかし、長期投与によりウェアリングオフやジスキネジアといった運動合併症が出現することが大きな課題である。近年、日本においては2023年7月にホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注製剤が上市され、レボドパの薬物動態学的欠点を補う新たな選択肢として使用されているが、それ以降新規薬剤は上市されていない。 一方で、低分子化合物以外の新たな治療戦略も積極的に検討されている。その代表例として、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を被殻に両側移植する再生医療の臨床試験が国内で実施され、すでに承認申請が行われている。また、PDの病態の根幹に関わるとされるαシヌクレインを標的とした疾患修飾療法の研究開発も世界的に進展している。具体的には、異常凝集したαシヌクレインのクリアランスを促す抗体医薬や、発現抑制を目的とした核酸医薬が開発中であり、いくつかは臨床試験段階に到達している。 このように、パーキンソン病に対する新薬開発は、従来の対症療法を超えて、疾患の進行抑制を目指した多角的アプローチへと広がりつつある。今後は、症状緩和と病態修飾の双方を見据えた治療戦略の確立が期待されており、臨床現場における治療体系にも大きな変革をもたらす可能性がある。

著者関連情報
© 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top