医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
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原著
患者からの暴力被害の実態と支援状況及び支援に対する満足度との関連
−一般病院の看護師を対象とした調査より−
髙田 規久子成 順月薬袋 淳子
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2021 年 16 巻 3 号 p. 302-311

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抄録

目的:看護師を対象に患者からの暴力被害と支援状況及び支援の満足度との関連を明らかにする. 方法:協力が得られた一般病院4施設の看護師を対象に,暴力被害と支援状況,暴力対策の組織体制,支援の満足度に関する質問調査を行った.記述統計で被害実態と支援状況を調べ,支援の満足有無を従属変数とし,受けた支援,組織体制を独立変数とし,被害状況で調整した多重ロジスティック回帰分析を行い,満足度に関連する支援と組織体制を調べた. 結果:回答者728人中387人(53.5%)に被害経験があった.被害による心の変化では,患者への嫌悪感が48.6%,仕事意欲低下が41.9%と上位であった.受けた支援は同僚の支援が36.7%で最も多く,次に看護師長の面談(19.1%)であった.多変量解析では,満足ありのオッズは同僚の支援(OR=6.34;95%CI:3.23-12.4),看護師長面談(2.95:1.48-5.91)あり群で有意に高く,職員の安全確保(0.25:0.11-0.58),暴力被害の報告基準(0.23:0.07-0.75)の組織体制なし群で有意に低かった. 結論:看護師の半数以上が暴力を受け,支援を受けたのはその半数にも満たない実態が明らかとなった.暴力被害から看護師を守るためには,同僚や看護師長などの人的サポート,職員の安全確保や被害報告の基準設定などの組織体制が重要であることが示唆された.

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