社会学評論
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配分格差評価としての領域別不公平感の規定構造
機会認知を介した社会階層との因果関係
白川 俊之
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2010 年 60 巻 4 号 p. 570-586

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抄録

不公平感を生じさせる要因について検討をおこなう.本稿は,獲得的地位にもとづく領域別不公平感を,資源配分への評価の指標としてとりあげる.そして獲得的地位による資源配分への異議申し立てになるものとして,機会の不平等という社会状況に着目する.分析では,機会の不平等を認知する傾向が,客観的な階層的地位と,不公平感と,それぞれどのような関係にあるのかを重点的に検討する.このような方法をとることで,階層が機会の不平等という状況認知への影響を介することで,不公平感といかなる関係にあるのかを明らかにすることが本稿の目的である.
分析の結果,機会の不平等を認知すると,不公平感が上昇するという関係があることがわかる.階層と上記の両変数との関係を見ると,低階層の人において,高い不平等認知と不公平感とが観測される.階層と不平等認知から不公平感を説明する重回帰分析では,階層要因のなかでは教育が負の,そして不平等認知が正の影響を,不公平感に対してもっており,不平等認知を統制しても教育の効果は消えない.以上より,回答者の階層的地位が低いと機会の不平等を認知する傾向が高まり,結果,不公平感が上昇するという間接的な関連がある一方で,低学歴層における高い不公平感という直接的な関連が存在することが判明する.

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© 2010 日本社会学会
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